将来相続が発生しそうな方
せっかく築き上げた財産が、相続税という形で奪われてしまうことは頭の痛い問題です。
また自分の財産によって、それまで仲のよかった家族の間で争いが起こってしまうということもあります。
相続税の節税対策をしていれば無事に相続税を納付することができます。
1通の遺言書があれば相続人同士で争いが起きることを防ぐことができます。
相続は、事前にどれだけしっかり準備できるかが非常に重要なポイントです。相続税対策は、資産内容や家庭の事情にあった方法で、余裕をもって行うことが大切となります。早く始めるほど選択肢が増え、無理のない計画をたてることができます。
| 対策 | 概要・特徴 | 財産の減少 | 財産の評価減 | 納税資金準備 | その他 |
| 相続人に連年贈与 | 贈与税の基礎控除を利用して、相続人に財産を移転 | ◯ | |||
| 孫に生前贈与 | 一代飛び越して贈与することで相続回数を減らす | ◯ | ◯ | ||
| 配偶者に居住用資産を贈与 | 特例により婚姻期間20年以上の配偶者へ一定額まで無税で贈与できる | ◯ | |||
| 生命保険に加入 | 生命保険に加入して納税資金を確保。非課税の特典を利用。 | ◯ | ◯ | ||
| 生命保険料を贈与 | 子供に保険料を蔵よし、子どもが契約者になって生命保険に加入 | ◯ | ◯ | ||
| 遊休地にアパートを建築 | 貸家建付地の評価減、貸家の評価減などを利用。家賃収入もある。 | ◯ | ◯ | ||
| 配偶者に居住用資産を贈与 | 特例により婚姻期間20年以上の配偶者へ一定額まで無税で贈与できる | ◯ |
相続税対策
相続税対策とは、節税対策・もめない対策・財源(納税)対策の3つの柱を中心に行います。
節税対策
相続税における節税の考え方は、大きく分けると2つです。
「贈与を活用すること」と「財産評価を下げること」です。
贈与は110万円を超えた場合に贈与税が発生します。
110万円以下の贈与の場合には、贈与税はかかりません。
贈与税は贈与方法を工夫することによって相続税を減らすことができます。
贈与税は1年間にいくら贈与したかによって税額が決まってきますので、低い金額の贈与を長期にわたって行えば、税額を抑えることができます。
財産評価を下げるという方法には、色々なやり方がありますが、例えば、
一方、「財産評価を下げる方法」とは、更地にアパートを建てることで「貸家建付地」にしたり、小規模宅地等の特例を適用できるように工夫して評価額を安くする方法です。
更地で土地を持っている場合は、そこに建物を建てることで相続税評価額を大きく下げることができます。
中でもアパートやマンションを建てて人に貸すことは、多くの地主さんがとっている典型的な相続税対策です。
これは所得税、固定資産性の節税にもつながります。
もめない対策
相続問題では少なからずいざこざが発生します。
「相続争い」を防ぐというのも、重要な相続対策になります。
相続でもめてしまい、家族間の関係性が悪くなってしまったというケースも少なくありません。
自分の財産を、どのように相続してほしいかを明確にしておくことが大切です。
遺言書を作成し、自分の意思をはっきりさせておくことで、相続争いはある程度防ぐことができます。
また、財産を分けやすくしておくということも重要なことです。
財産を不動産ばかりにかたよらせない、建物を建てない土地を残しておくといったことが考えられます。
財源(納税)対策
財源対策(納税資金の確保)も重要な相続対策の一つです。
相続税額を下げることばかりに気をとられ、肝心の相続税を納付する資金がないと意味がありません。
多額の現預金を残せる場合であれば、問題ありませんが、そうでない場合には、「物納用の土地を残す」「死亡退職金を使う」といった財源対策をしておくことが重要です。
保険に加入して、死亡時には保険金を受け取れるようにしておくというのも対策の一つです。
生前贈与
生前贈与とは
生前贈与とは、生前に個人の資産を家族等に譲り渡しておく(贈与する)ことです。
自分の財産を、自分の意思でもって引き継いでもらいたい人に渡すことができ、うまく活用すれば、相続税を減らす効果も期待できます。
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産(複数からの贈与によって財産を取得している場合はその合計)を対象にして、翌年2月1日から3月15日までに 申告・納付します。
贈与税の基礎控除
贈与税は1人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
相続開始前3年以内の贈与財産については、相続財産に加えて相続税を計算し、その代わ りに、 前に納めた贈与税額はその相続税額から控除されます。
つまりは死亡時に近い贈与に は、相続税を課すという建て前になっています。
ですからできるだけ早い相続対策が必要になります。
生前贈与による相続税対策
相続税の節税のポイントは、「贈与税の負担をいかに最小限に抑えて、財産を生前に贈与しておくこと」と言われています。
年間1人当り110万円の贈与税の基礎控除を活用します。
中には110万円では、相続対策には少なすぎるという方もいらっしゃいます。
しかし、1人ではなく、複数の配偶者に贈与していけば、金額は大きくなります。
たとえば、配偶者と3人の子供に、それぞれ110万円ずつ10年間贈与していけば、無税で4,400万円までの贈与が可能になります。
ただし、こうした「連年贈与」は「定額贈与」とみなされる可能性があります。
たとえば、毎年110万円ずつ贈与した場合、「向こう10年間にわたり合計1100万円を贈与するという権利を最初の年に贈与した」と税務局にみなされ、その評価額を課税対象に取り込まれ、高額の贈与税が課される恐れがあります。
こういった状況を回避するには、年によって贈与する財産の内容や金額を変えるなど不規則性をもたせるという方法があります。
このほかにも、「契約書をつくって贈与する」「預金口座からの資金の出し入れにする」などの方法もあります。
贈与の開始時に確定した権利が発生していたとみなされないように、証拠を残す工夫をすることが必要です。
住宅取得等のための時限的な贈与税の軽減
平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に直系尊属から居住用家屋の取得等に充てるために金銭の贈与を受けた場合で一定の要件を満たすときには、当該期間を通じて500万円まで贈与税を課さないこととされました(措法70の2)
なお、この特例は、暦年課税又は相続時精算課税の従来の基礎控除又は特別控除にあわせて適用が可能とされています。
暦年課税の場合
基礎控除(110万円)+今回の非課税枠(500万円)=610万円(この金額まで贈与税がかからない)
相続時精算課税の場合
住宅特例含む特別控除(3500万円)+今回の非課税枠(500万円)=4000万円
遺言書作成
遺言書作成のメリット
遺言書を作成することのメリットは大きく分けて2つあります。
1つ目は自分が死んだ後親族間での争いが生じにくくなるということです。
原則として、遺言書の内容どおり遺産を分配しなければならないからです。
2つめは自分の思い通りに財産を分配することができるということです。
遺言書がなければ民法で定められた法定相続分にしたがって遺産が分配されることになります。
場合によっては、財産を渡したくなかった人に対しても多大な財産がその人の手元にわたることになります。
遺言書作成のポイント
相続には少なからずいざこざが生まれます。
遺言は、一生懸命働いて築き上げてきた財産を円滑に相続するための最善の方法です。
長い間、人生を共にしてきた人への最後の仕事といえます。
遺言書作成には法的要件が求められます。
遺言を書くには一定のルールがあり、そのルールに従って遺言書を作成しなければなりません。
ルールが守られていない遺言書は無効になってしまいます。
またルールはしっかり守られていても内容が曖昧であったり、色々な意味に解釈できてしまう場合には争いの原因になることがあります。
遺言というと「縁起でもない」「暗い感じがする」といったイメージを持たれる方もいるかもしれません。
しかし、遺言書がなく、相続人同士が争いになったり、親族の関係が悪化したりというケースも数多く見られます。
家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割の争いの3分の2は遺言を書いておけば防げたものであると言われています。
遺言書を書くというのは、財産を持つ者の義務といっても過言ではありません。
遺言書の種類
遺言書には3つの種類があります。
自筆証書遺言
本人が遺言書を作成するものです。
遺言の内容・日付・指名を書き、押印します。
この場合ワープロやテープは認められません。
遺言書が複数ある場合には最も日付が新しいものが優先されます。
自筆証書遺言には、証人の必要はありません。
遺言を秘密にできるというメリットはありますが、紛失や偽造の危険性があります。
自分自身で作成すれば、費用はかかりませんが方式不備等により無効になってしまう可能性はあります。
また検認手続きが必要となります。
公正証書遺言
本人が口述し、公証人が筆記します。
印鑑証明書・身元確認の資料・相続人等の戸籍謄本、登記簿謄本が必要になります。
自筆証書遺言と違い、偽造される危険性は極めて少なく、証拠能力も高いですが、作成手続きが煩雑になりやすい・遺言を秘密にできない・費用がかかる等のデメリットがあります。
また公正証書遺言には、2人以上の証人立会いが必要となります。
検認手続きは不要です。
秘密証書遺言
本人が作成した遺言書に署名捺印をして遺言書を封じます。
その際に、遺言書に使用したものと同じ印で封印をします。そして、公証人にこの遺言書は遺言者のものであるという確認を封筒に署名してもらう方法です。
遺言書の存在が明確であり、偽造の危険性は極めて低くなります。
遺言の内容も秘密にすることができます。
デメリットとしては作成の手続きが煩雑になりやすいことや費用がかかってしまうことが挙げられます。
節税対策
相続人を増やして税率区分を下げる
相続税は相続人を増やして、一人当たりの相続額を少なくし、低い税率区分にあてはまれば、納税額をがくんと減らすことができます。
また相続人が一人増えるごとに基礎控除額が1000万円追加されます。
つまり、相続人の数を増やすことで全体の相続税を減らすことができるのです。
どうやって相続人を増やすかというと、「養子縁組制度」を活用します。
養子縁組をすることで、相続人の相続分が細分化されます。
民法上は、養子縁組は何人でも可能ですが、相続税法では、実子がいる場合には養子は何人いてもまとめて一人になり、1000万円の基礎控除額の加算が認められます。
実子がいない場合は2人まで認められ、基礎控除額は2000万円になります。
このほかにも、生命保険と退職金の非課税枠(法定相続人一人500万円)が増えます。
【注意点】
「法定相続人が増える」ということは「遺産をもらう権利のある人が増える」ということです。
言い換えると「遺産分割でもめる可能性も増える」ということになります。
遺言等を活用し、「遺産分割対策」をしておく必要があります。
所有財産の評価額を下げる
土地や建物は、利用状況に応じて財産評価基本通達により評価減があります。
更地で土地を持っている場合は、建物を建てることで相続税評価額を大きく下げることができます。
アパートが建っていると、何も建てていない更地の状態に比べ、約80%の評価になります。
つまり土地評価額20%オフということです(売買をするときには損になりますが、相続だけを考えると得になります)。
建物は、固定資産税としての評価額がそのまま相続税の評価額になり、建築費の60%まで下がるといわれています。
これが木造アパートだとさらに評価額がダウン、大きな節税効果が得られます。
多くの地主さんがとっている典型的な相続税対策です。
所得税、固定資産税の節税にもつながります。
【注意点】
賃貸物件は、管理に関して手間も費用もかかりますし、文中に記載した通り、使用が制限されるため、売買の際には不利に働くこともあります。
また、「ポイントその3」にも関係しますが、借入をおこして建築する場合は、当然のこととして「借入金の返済」が必要となってきます。
この対策を実行するうえで、「将来を見越して、いかに収益性の高い物件を建てることができるか」がとても重要な検討課題となってきます。
返済可能な借金を多く作る (セオリ-の一つと言われるので掲載しますが、
おすすめしません)
借入金の残額は全額債務控除となるので、相続税を大きく減額する効果があります。
更地に建物を建てる時に借金をすると、さらに効果的な相続税対策となります。
ただしその借金は返済可能なものでないと、返済に苦労することになってしまうので注意が必要です。
生前贈与をして財産を減らしておく
財産を自分の名義で持ち続けていれば、いずれ自分が死んだ時には当然ながらまるまる相続税の課税対象になります。
そのため生前に手放せるものは手放した方が相続税は下がります。
子供や孫に生前贈与して、財産を減らすというのは多くの方がやられている方法です。
贈与税は高い、という先入観があるものですが、年間110万円までの基礎控除があります。
またこの他にも活用できる特例は色々あります。
ただし相続が発生した時点から3年以内に贈与されたものは、相続税の対象なってしまいます。
ですから、なるべく早く生前贈与をはじめることをお勧めします。
【注意点】
「特定の相続人に資産の大半を生前贈与してしまう」ことは、相続の際の遺産分割において紛争のもとになりかねません。
しっかりとした贈与計画のもと進める必要があります。
納税資金として生命保険と自己株式を活用する
ポイント1~4を実践しても多額の税金がかかってくる場合もあります。
そこで地主さんの場合、納税資金にあてる目的で大口の生命保険に加入するのが一般的です。
相続が発生するとすぐに現金が用意できますし、保険の掛け金を払うことで、相続財産を減らすことにもなります。
また、会社を経営している場合は、会社の株式を活用するという方法もあります。
会社の内容が優良であればあるほど株価も高くなりますし、その高い株価に対して相続税が課税されてしまいます。
また、未上場会社の場合は、一般市場性のない株式ですから、売りたくても売ることができません。
これについては商法の改正により、自分がオーナーであった会社に一定量の株式を買わせることができるようになりました。
つまり、株式を相続した遺族がその株式を会社に売却し、その売却資金を使って、納税を行うということが可能になったのです。
